40歳で一人暮らしを始めたとき、家計の変化として一番大きかったのは、食費でも光熱費でもなく住居費でした。逆に言えば、それまでの約20年、私の家計が大きな無理なく回っていた最大の理由も、住居費です。
私は20代から約20年間、兄弟と家賃を折半して暮らしていました。この記事では、その20年を「資産形成」の視点で振り返ります。折半の効果はいくらだったのかという試算、住居費が家計の「最大レバー」である理由、そしてフェアに、同居のデメリットまで。実家暮らしやシェアに少し後ろめたさを感じている方にこそ、読んでいただきたい内容です。
1. 20年間、兄弟と「家賃折半」で暮らしていた

引越しの記事で書いたとおり、私は40歳で一人暮らしを始めるまで、兄弟と2人で暮らしていました。期間はおよそ20年。その間に引越しも2〜3回していて、物件を選び、家賃や光熱費を分担し合う——いま思えば、家族版のシェアハウスのような暮らし方です。
最後に住んでいたのは、家賃10万円の3LDK(2階建て)でした。これを折半して、私の個人負担は月5万円。この数字は断捨離の失敗談の記事でも公開したとおりです。
もちろん、20年間ずっと家賃が10万円だったわけではありません。物件が変われば家賃も変わっています。そこで次の章では、「家賃10万円の物件を2人で折半した」という仮の前提を置いて、この暮らし方の効果を試算してみます。
2. 折半の効果を試算する:一人暮らしとの差は20年で約480万円
まず、比較の置き方を確認しておきます。「10万円の3LDKに一人で住んだ場合」と比べれば、差額は月5万円・20年で1,200万円という派手な数字になります。ですが、一人暮らしでファミリー向けの3LDKを借りる人はまずいません。実際に私が40歳からの一人暮らしで選んだのは家賃7万円の部屋でしたから、現実的な比較は「折半の5万円」と「一人暮らしの7万円」です。
| 項目 | 兄弟と折半(当時) | 一人暮らし(現在・想定) |
|---|---|---|
| 間取り | 3LDK(2階建て) | 2LDK・40㎡ |
| 家賃(総額) | 10万円 | 7万円 |
| 個人負担 | 5万円 | 7万円 |
- 月の差額:2万円
- 年間:24万円
- 20年間:約480万円
試算の前提
– 「家賃10万円を折半」は仮の前提です(実際は引越しのたびに家賃は変動しています)
– 一人暮らし側の7万円は、私が実際に払っている家賃です
– 比較は「いま、折半か一人暮らしかを選んだら」という同一時点の仮定です。当時と現在の家賃相場の違いは考慮していません
– 敷金・礼金・更新料・引越し費用は含めていません。これらも1世帯分を2人で分けられるため、含めれば差はさらに広がります
注目していただきたいのは、この約480万円が我慢の対価ではないことです。折半していた頃のほうが、広い家に住めていました。何かを切り詰めた覚えがないまま、一人暮らしより月2万円低い負担で暮らせていたのです。
家計管理の記事で、兄と暮らしていた頃は感覚的な予算でもなんとか貯金ができていた、と書きました。当時はそれを自分の管理能力だと思っていましたが、種明かしをすれば、土台にあったのはこの住居費です。株式投資を始めたのは40歳になってからですから、あの頃の余裕は、そのまま貯金として積み上がっていきました。その余裕が月2万円という形で、約20年、家計に生まれ続けていたのです。
では、いまの若い方がこの月2万円を、貯金ではなく積立投資に回したらどうなるでしょうか。仮に年3%で20年間運用できたとすると、元本480万円に対して約657万円という計算になります(金融庁「つみたてシミュレーター」で試算、2026年8月13日確認)。運用成果は保証されるものではありませんが、住居費の差額が「投資の原資」になり得る規模だということは、伝わるかと思います。

3. なぜ住居費が資産形成の「最大レバー」なのか
「レバー」とは:てこ(レバレッジ)のことです。小さな力で大きなものを動かす仕組みを指します。家計に当てはめると、「1回の意思決定が、毎月・何年も効き続ける項目」ほどレバーが長い、というイメージです。
私が住居費を「最大レバー」と呼ぶ理由は3つあります。
1. 一度決めれば、毎月自動で効き続ける——住居費は固定費(毎月ほぼ同じ額が出ていく費用)です。ラテマネーの記事で書いたコーヒー代のような変動費は、「今日は買わない」という判断を毎日積み重ねる必要があります。一方、住まいの判断は数年に1回。意志力も我慢も使わずに、差額が毎月生まれ続けます
2. 金額の桁が大きい——1回数百円の節約と違い、住まいの選択は月数万円単位で家計を動かします。同じ「節約」でも、動く桁が違うのです
3. 若いほど、給与に占める割合が大きい——ここが今回いちばんお伝えしたい点です
3つ目を、公的な統計で確認してみます。厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査によると、一般労働者(男女計)の平均賃金は、20〜24歳で月24.28万円、40〜44歳で月36.43万円です(出典:令和7年賃金構造基本統計調査の概況・厚生労働省、2026年8月13日確認)。
仮に家賃7万円の部屋に住むとすると、その負担は次のように変わります。
| 年齢階級 | 平均賃金(月額) | 家賃7万円の占める割合 |
|---|---|---|
| 20〜24歳 | 24.28万円 | 約29% |
| 40〜44歳 | 36.43万円 | 約19% |
※家賃水準は地域差が大きいため、金額そのものではなく「同じ家賃でも若いほど重い」という比率の例としてご覧ください。
同じ7万円の家賃でも、20代前半には賃金の3割近い重さになる。しかもこの賃金は税引き前の額面ですから、手取りベースではさらに重くなります。つまり、収入が少ない時期ほど、住居費を抑えたときの効き方が大きいのです。若い頃の私が、意図してというより結果としてこの恩恵を受けていたことは、正直に書いておきます。
レバーという意味では、「収入を増やす」という選択肢ももちろんあります。ただ、昇進や転職は自分の決断だけでは決まらず、時間もかかります。自分の決断だけで、確実に動かせる——その意味で、支出側の最大レバーが住居費なのです。
4. フェアに書く:同居のデメリットと、私が40歳で一人暮らしを選んだ理由

ここまで折半の良さを書いてきましたが、デメリットに触れないのはフェアではありません。約20年続けた私の実感として、次のような制約は確かにありました。
- 生活リズムのすり合わせが続く——お風呂の順番、洗濯のタイミング、深夜の物音。一つひとつは小さくても、相手に合わせる調整が毎日、20年続きます
- プライバシーの確保が難しい——在宅時間や生活の様子は、良くも悪くもお互いに筒抜けです。友人を気軽に呼びにくい、という場面もありました
- 分担のルールが要る——家賃だけでなく、光熱費・日用品・家事の分担まで含めて取り決めが必要です。ここが曖昧だと、金額の損得より先に関係のほうがぎくしゃくします
- 出口を自分だけでは決められない——同居は、相手の結婚や転勤といったライフイベントでも終わります。「いつまで続くか」を自分のペースだけでは決められないのは、実家暮らしやシェアハウスでも同じです
そして私は、40歳で一人暮らしを選びました。個人負担は5万円から7万円に増えましたが、駅まで徒歩8分になり、生活のすべてを自分のリズムで決められるようになった。この「時間と精神的な自由」は月2万円を払う価値のある投資だった、というのが引越し後の実感です。また、支出の構造が大きく変わったことが、家計管理を本気で始めるきっかけにもなりました。
だから私は、住居費の折半を「ずっと続けるべきもの」だとは思っていません。資産形成の土台ができるまでの、期間限定のブースター。そう捉えると、デメリットは「期限付きのコスト」になり、得られるものと天秤にかけやすくなります。
5. 若い人ほど効く。実家・兄弟・シェアハウスという現実的な選択肢
第3章で見たとおり、住居費のレバーは若いほど長くなります。加えて、抑えた差額を積立投資に回すなら、運用期間が長く取れる若い時期ほど複利(利益がさらに利益を生む仕組み)の効果も大きくなります。月2万円の差額は、20代で作れたなら、40代で作る同じ2万円より価値が高いのです。
そのための選択肢は、特別なものではありません。
- 実家で暮らす——最も手軽で効果も大きい選択肢です。生活費を家に入れるとしても、一人暮らしの家賃より低い水準で収まるでしょう。そのうえで、家事の分担など家族ではなく「同居人」としての役割を持つことが、金額とは別の後ろめたさを消してくれます
- 兄弟や気の合う友人とのルームシェア——私の20年はこの形でした。家賃・光熱費・家事の分担ルールを最初に決めておくことが、長続きの条件です
- シェアハウス——敷金・礼金や家具家電の初期費用を抑えられる物件が多く、「まず住居費を軽くして貯める期間」の器として合理的です
「実家暮らしやシェアは甘え」という見方があるのは承知しています。ただ、第3章の数字を見る限り、収入が少ない時期に住居費を抑えるのは、資産形成の面では堂々と合理的な戦略です。少なくとも、後ろめたさを感じる必要はありません。そのうえで、第4章のデメリットや、一人での生活経験から得られるものとの天秤は、ご自身の状況で判断していただければと思います。私自身、いまは一人暮らしの自由に月2万円分の価値を感じている側です。どちらが正しいという話ではありません。
また、これは若い方だけの話でもありません。40代の読者の方なら、お子さんが進学や就職で家を出るかどうかの場面で、この「住居費のレバー」の視点は判断材料になるはずです。私自身も、荷物を減らして次はより狭く質の高い部屋へ移る計画を立てており、同じ考え方を40代の住み替えに使おうとしています。
6. まとめ:住居費を決めることは、資産形成のペースを決めること
最後に、この記事の要点をまとめます。
- 私は20代から約20年、兄弟と家賃を折半して暮らしていた。最後の住まいは家賃10万円の3LDKで、個人負担は月5万円
- 現実的な一人暮らし(月7万円)と比べた差額は月2万円。仮の前提でも20年で約480万円。しかも広い家に住めて、我慢は不要だった
- 住居費は「一度の決断が毎月効き続ける」固定費で、家計の最大レバー。収入が少ない若い時期ほど、給与に占める割合が大きく、効き方も大きい
- 一方で、生活リズム・プライバシー・出口の制約というデメリットも確かにある。「期間限定のブースター」と捉えて天秤にかける
- 実家・ルームシェア・シェアハウスは甘えではなく、合理的な選択肢。ただし一人暮らしで得られる自由にも、それだけの価値がある
節約というと日々の食費や光熱費に目が行きがちですが、家計をいちばん大きく動かすのは、数年に1回の「住まいの決断」です。これから住まいを選ぶ方が、家賃の額だけでなく「この選択が自分の資産形成のペースを決める」という視点を持つきっかけになれば幸いです。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
出典
- 令和7年賃金構造基本統計調査の概況(厚生労働省)(2026年8月13日確認)
- つみたてシミュレーター(金融庁)(2026年8月13日確認)
※本記事の試算は「家賃10万円を2人で折半」という仮の前提に基づくものです。統計数値は執筆時点(2026年8月13日)の公表資料によります。
~回顧録~(kai-co-log) 