予定外の出費にどう備える?予備費を積み立てない私の家計管理

前回の家計管理の記事で、「年間予算を立てると、罪悪感なく使っていいお金が決められる」と書きました。

ただ、実際に予算で家計を回していると、必ずぶつかる相手がいます。予算に収まらない「予定外の支出」です。家電の故障、急な冠婚葬祭、思いがけない一時金——どれだけ丁寧に予算を組んでも、予算の外からやってくる支出はゼロにできません。

この記事は、その予定外の支出にどう備えるかという番外編です。世間でよく勧められるのは「予備費を毎月積み立てておく」方法ですが、先に結論をお伝えすると、私は「予備費」という形では積み立てていません。備えのお金は貯金として予算に組み入れ、貯金そのものを多めにしておいて、予定外の支出は残高で受け止めて「貯め直す」方式です。

なぜ定番の予備費方式ではなく、この形なのか。経理の仕事とFP資格の知識をベースに、2つの備え方の違いと、私の運用を紹介します。

1. 予算を決めても、「予定外」は必ずやってくる

予定外の支出には「突発の故障」「不定期の大型出費」「契約に関わる一時金」といった型があります。ゼロにはできない前提で、受け止め方を決めておくことがこの記事のテーマです。

まず、私自身がここ数年で経験した「予算の外からきた支出」を挙げてみます。

  • 突発の故障——引越し前の話ですが、エアコンが壊れたときは10万円以上の出費になりました。夏場の故障は「直すかどうか」を考える余地すらありません
  • 不定期の大型出費——親へのプレゼントです。調理家電電動歯ブラシを贈った話は記事にも書きましたが、自分から進んでやっていることとはいえ、金額としては大きい買い物でした。「予定外」というより「毎月の予算には載せていない支出」です
  • 契約に関わる一時金——今年一番大きかったのは、不動産投資に関わる契約の解約金でした。月々の予算ではとても吸収できない規模の支出です(このあたりの話は、改めて別の記事で書く予定です)

こうして並べると、種類はばらばらでも共通点が見えてきます。どれも、予算を立てた時点では見えておらず、毎月の予算の枠では受け止めきれない支出だということです。年間予算は、立てた時点で見えているものしか載せられません。

逆に言えば、毎年や2年に1回のペースで発生するとわかっている支出は、もう「予定外」ではありません。私は年に1回、予算を見直すタイミングで、こうした繰り返す支出を年間予算に組み込むようにしています。私の場合、2年に1回の代表は家賃の更新料、毎年のものはサブスクなどの年会費関係です。前年の実績が家計簿アプリの記録に残っているので、見直しのときに抜け漏れがありません。前の年に予定外だったものも、繰り返すとわかれば翌年からは予算側へ。それでも予算に載せようがないものだけが、ここで言う「予定外の支出」です

予算はあくまで平時の道具。だからこそ、予算とは別に「予定外が来たときの受け止め方」を決めておく必要があります。

2. 備え方は2通り:「支出で管理」か「資産で管理」か

定番は予備費の積立(支出で管理)。もう一つが、貯金のバッファで吸収する方法(資産で管理)。どちらも正解で、違いは「どこで管理するか」です。

予定外の支出への備え方は、大きく2つに分けられます。

1つ目は、予定外の支出そのものを予算に組み込む方法です。毎月の家計に「予備費」という費目を作り、貯金とは別に一定額を積み立てておく。故障や冠婚葬祭が起きたら、その積立から払う——節約や家計管理の情報でよく勧められる、定番のやり方です。

この方法と相性がいいのが、銀行の「目的別口座」です。たとえばドコモSMTBネット銀行(旧 住信SBIネット銀行)には、1つの口座の中に最大10個まで「貯金箱」のような目的別口座を作れる機能があり、目標金額や期間を設定して、毎月自動で振り替えることもできます(出典:ドコモSMTBネット銀行公式FAQ、2026年8月1日確認)。「予備費」「旅行」「家電の買い替え」と財布を分けておけるので、積立方式を仕組みで支えてくれます。

2つ目は、貯金そのものを多めにしておく方法です。予備費という費目も専用の口座も作らず、貯金の残高に余裕(バッファ)を持たせておいて、予定外の支出が来たら残高全体で受け止め、あとから貯め直す。

私は、この2つを次のように整理しています。

2つの備え方の違い

支出で管理(予備費の積立)——毎月の家計の中に「予備費」という費目を作り、事前に枠を確保しておく

資産で管理(貯金バッファ)——貯金残高という資産側に余裕を持たせ、発生したときに吸収する

どちらが優れているという話ではありません。同じ「備え」を、家計のどちら側に置くかの違いです。そのうえで、私は後者を選んでいます。

3. 私が「予備費」として積み立てない理由

楽天銀行には目的別口座に当たる機能がないこと。そして「何にいくらかかったか」を記録する方が、費用の実態がつかめること。この2つで、私は「予備費として持つ」方式を見送りました。

先に正確に言っておくと、私も「積み立て」自体はしています。毎月の予算で貯蓄に回す額を決めて、そこにお金を回しているからです。違いは、そのお金を「予備費」という費用の枠で持つか、「貯金」という資産として持つか。私が見送ったのは前者の持ち方であって、積み立てそのものではありません。そのうえで、予備費という形にしない理由は2つあります。

1つ目は、シンプルに仕組みの問題です。私のメインバンクは楽天銀行で、ドコモSMTBネット銀行のような目的別口座の機能がありません。1つの口座の中で「ここからここまでは予備費」と頭の中で分けて貯めることはできますが、残高が混ざってしまい、いくら貯まっているのかが分かりづらい。仕組みの支えがない積立は、管理の手間だけが増えていきます。

2つ目は、こちらが本質的な理由ですが、費用の見え方です。予備費の積立は「事前に枠を確保する」方式なので、実際に何が起きたかは「枠がいくら減ったか」でしか見えません。一方、私は前回の記事で書いたとおり、家計簿アプリで支出を費目ごとに記録する管理をしています。予定外の支出が起きたら、【何】に【いくら】かかったかをそのまま記録する——この方が、エアコンに10万円かかった、という家計の実態がはっきり残ります。経理の仕事でも、費用は「何にいくら使ったか」で認識するのが基本です。

もちろん、積立をしながら費目の記録をすることもできます。ただそれは、費目の記録と積立枠の残高管理という二重の管理を抱えるということです。記録だけで実態がつかめているなら、枠の管理は手放してもいい。枠の消化で見るより、発生した事実で見るほうが、私には性に合っていました。

念のため添えると、これは積立方式の否定ではありません。目的別口座が使える環境で、先に分けておくほうが安心できる方にとっては、積立は十分に機能する方法です。あくまで「私の管理スタイルには合わなかった」という話です。

4. 私の備え方:生活費1年半+給与1ヶ月の「貯め直し」方式

貯金の目安は「生活費1年半分+給与1ヶ月分」。予定外の支出で減った残高を、毎月の貯金で自然に貯め直す。仕組みはこれだけです。

では、資産側のバッファをどのくらい持つか。私の目安は、ざっくり生活費の1年半分を確保したうえで、プラスで給与1ヶ月分ほどがクッションとして乗っている状態です。

生活費の1年半分は、病気や失業といった万一に備える、いわゆる生活防衛資金です(FPの世界では生活費の3ヶ月〜1年分がよく目安とされますが、私は安心を優先して厚めにしています)。その上に乗せた給与1ヶ月分が、エアコンの故障やプレゼントのような予定外の支出を受け止めるクッションです。金額の絶対値は収入や家族構成で変わるので、「生活防衛資金+α」という構造のほうを参考にしてください。

誤解のないように補足すると、予備費用の口座が別にあるわけではありません。支払いは、ふだんの生活費と同じ口座からです。予定外の支出があった月は、その月の給与で吸収しきれなかった分だけ、結果として貯金の残高が減る——それだけのことです。積立方式が「財布を物理的に分ける」管理だとすれば、こちらは財布は1つのまま、残高の目安だけを決めておく管理と言えます。だから、口座を増やす必要も、予備費に補充するという特別な作業もありません。

この方式が回るのは、毎月の貯金がベースにあるからです。私は予算を立てる時点で、収入から貯蓄と投資に回す割合をそれぞれ決めていて、毎月まず1〜2万円以上は貯金に回るようにしています(いまは投資を優先した配分です)。貯蓄の割合は控えめでも、予定外の支出で残高が減れば、翌月からの貯金で自然に貯め直しが始まります。

なかには、今年の解約金のように、給与1ヶ月分のクッションを超える規模の支出もあります。その場合は一時的に生活防衛資金側に食い込みますが、そこを一般的な目安より厚い1年半分にしてあるので、貯め直しに数ヶ月かかっても家計と気持ちは崩れません。クッションの下を厚くしてあるのは、まさにこのためです。

このやり方の欠点も書いておきます。予算外の支出が何年も続けば、毎月の貯金では貯め直しが追いつかなくなる可能性があることです。そうなったときは、投資に回している割合を減らして貯金の割合を増やすか、年間予算そのものを絞って貯金に回す——配分を組み替える調整弁を用意しています。貯蓄・投資・支出の割合を予算の時点で決めてあるからこそ、崩れたときも「どこを動かすか」が明確です。

バッファが目安を超えて貯まっているときは、余剰資金をタイミングを見て高配当株の購入に回しています。いまは金利が上昇傾向なので、ローンの繰上返済を優先していますが(このあたりは不動産投資の話とあわせて、別の記事で書く予定です)、考え方は同じです。バッファはあくまで「受け止めるためのお金」なので、目安を超えた分まで現金で遊ばせておく必要はない——ここも含めて「資産で管理する」ということだと考えています。

5. どちらが合うかは「管理の性格」で決まる

先に分けると安心する人は積立、記録で把握したい人は貯め直し。自分の管理スタイルに合う方を選べば、どちらでも機能します。

2つの方式を、どう選べばいいか。私は「お金の管理で何をすると安心できるか」という性格で決まると思っています。

積立(支出で管理)が合う人

– 目的ごとにお金が分かれていると安心できる

– 目的別口座が使える銀行がメインバンク

– 貯金と生活費の境目が曖昧になりがちで、先に分けておきたい

貯め直し(資産で管理)が合う人

– 家計簿アプリなどで支出の費目記録ができている

– 口座や管理の対象を増やしたくない

– 残高全体で見るほうが分かりやすい

大事なのはどちらを選ぶかより、予定外の支出が来ても家計が崩れない「受け止め場所」を、事前に決めておくことです。受け止め場所さえあれば、エアコンが壊れても解約金が来ても、毎月の予算——「使っていいお金」の枠——を守ったまま乗り切れます。

6. まとめ:予定外の支出は「なくす」ものではなく「受け止め方を決めておく」もの

平時は予算で、予定外はバッファで。二本立てにしておくと、想定外が来ても家計と気持ちが崩れません。

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • 毎年・2年に1回と繰り返す支出は、予算の見直しで年間予算に組み込む。それでも突発の故障、不定期の大型出費、契約に関わる一時金などの「予定外」はゼロにできない
  • 備え方は2通り。「支出で管理」(予備費を積み立てる。目的別口座が仕組みとして向く)と「資産で管理」(貯金のバッファで吸収する)
  • 積立額は「予備費(費用)」ではなく「貯金(資産)」として予算に組み入れる。理由は、楽天銀行に目的別口座がないことと、「何にいくらかかったか」を記録するほうが費用の実態がつかめること
  • 私のバッファは「生活費1年半分+給与1ヶ月分」。口座は分けず、残高の目安だけを決めておく。毎月1〜2万円以上の貯金がベースにあるので、減っても自然に貯め直せる
  • どちらの方式が合うかは管理の性格次第。大事なのは「受け止め場所」を事前に決めておくこと

予算を立てていても、予定外の支出が来ると「せっかくの計画が崩れた」と感じてしまいがちです。でも、受け止め場所を決めておけば、それは計画の崩壊ではなく、想定内の想定外になります。本編の記事で書いた「使っていいお金を決める」予算と、この記事のバッファ。二本立てで、家計はぐっと崩れにくくなります。

この記事が、ご自身の「受け止め方」を決めるきっかけになれば幸いです。

最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。


出典

※本記事は個人の家計管理の体験談であり、特定の金融機関・金融商品の利用を推奨するものではありません。目的別口座などの機能・条件の最新情報は各公式サイトをご確認ください。

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